止まらない円安の潮流
本日、日銀は金融政策決定会合で0.25%の利上げを決定しました。これで日本の政策金利は1.25%程度。
物価の上振れリスクを早期に抑制するための措置とされています。が、ベッセント米財務長官が円安に対して警戒感を強めていることも一因と考えられます。
利上げしたことで円が買われ円高に振れるはずですが、決定発表直前からドル円相場はドル高・円安に動き始め、一時1ドル=157円超まで円が売られました(下PDF参照)。
では、なぜ円安の流れが止まらないのでしょうか?
為替の値動きは様々な要因で決定しますが、テクニカルや難しいファンダメンタルズ以外で円安基調が止まらない理由を3つ挙げます。
1.米国発の製品・サービスが生活に定着していること。
iPhoneを代表するApple製品、ExcelやWordなどのMicrosoft製品、エヌビディアなど電子機器に内蔵される半導体の製造メーカー製品、ネ
ットフィリックスやGoogle(YouTube)などのサブスクコンテンツなど米企業の提供する製品やサービスが日本の生活に溶け込んでいます。
特に、Apple製品の日本への浸透率は世界各国でトップです。これらのサービスの対価は円で支払われますが、企業間の支払いはドルで行
われます。海外旅行に行かずとも知らずに日本国内でドルベースの買い物を行っているのです。当然、企業間で支払いをする場合、ドル買
い・円売りとなります。
2.高市政権が進める政策
高市政権は積極財政策を推進しています。積極財政と書くと「おっ!」と思うかもしれませんが、簡単に説明すれば「バラマキ政策」で
す。経済対策と言えば聞こえはいいですが、日本では現金給付を行っても貯金などに回ってしまい、経済対策にはなりません。まして、高
市首相は来年4月から消費税減税を行うと明言しています。減税で減ってしまう税収はどこで賄うのでしょう。今年度の財政支出予定額は
140兆円、一方で今年度の税収見込み額は86兆円です。差額の約50兆円はすべて国債で賄いことになります。消費税率引き下げで減少する
税収の代替財源は明確に示されていないため、最終的には国債で賄うことになると推察されています。その場合、国債の発行高は50兆円を
大きく超え、発行残高は大きく増加することになります。国債は家計で例えると借金です。借金が大きく膨らめば破産してしまいます。国
も同様です。破産の可能性が高い国の資産はだれも欲しがりません。円もそうです。円を買う動きが鈍く、逆に円を手放そうとする動きが
活発になれば円安になります。
3.投資の普及
若い世代を中心に新NISAを活用した投資信託の積立による資産形成が広がりました。積立の対象となる投資信託の多くが、オルカン(オー
ルカントリー)もしくはS&P500のインデックス投資です。両銘柄とも海外の株式市場がメインとなるので、1.と同様に投資するための資
金はドルになります。つまり、オルカンやS&P500に投資する人が増えるほど円安に動きやすい状況になるというわけです。
上記のように、日本を取り巻く生活環境が円安を誘う状況になってしまっています。そして、円安が進むことで輸入品の価格が上昇する:コストプッシュが常態化し、物価をさらに上昇させることになっています。
7月末の日米協調為替介入後にベッセント米財務長官は日本に対して怒りをあらわにしたと聞きます。協調介入の翌営業日に消費税引き下げを発表し、2.に書いた流れを加速させたからです(実際に介入で155円半ばまで円高が進んだドル円相場は、1か月後には160円まで戻ってしまいました)。
このように「構造的円安」とも言える状況を反転させることは小手先の策では難しいのです。
追記:会合後の会見で植田日銀総裁が利上げのペースについて言及しなかったことで円安が進行する状況となっています。ピンポイントでドル円相場は1ドル=158円台まで円が売られています。(18:53加筆)